S.R.I(ShiroSano Research Institute)

佐野史郎さんを愛し、佐野さん出演作を研究する研究所

火だるま槐多よ(2023)

火だるま槐多よ パンフレット

※劇場でパンフレットを買いました!サイン入りで嬉しい。
※2023年12月23日鑑賞しすぐ書き始めたのですがまとまりきらず年を越してました

火だるま槐多よ

作品データ

公開日:2023年12月23日
プロデューサー:坂口一直 村岡伸一郎 小林良二
監督:佐藤寿保
撮影:御木茂則
美術:齋藤卓 竹内悦子(A.P.D.I)
照明:高原博紀
音楽:SATOL aka BeatLive 田所大輔
助監督:伊藤一平 
製作:スタンス・カンパニー 渋谷プロダクション
配給:渋谷プロダクション

出演:遊屋慎太郎 佐藤里穂 工藤景 涼田麗乃 佐月絵美 田中飄 佐野史郎 ほか

作品のあらすじ

大正時代の画家・村山槐多の描いた「尿する裸僧(いばりするらそう)」という絵画に魅入られた女がいた。その名は法月薊/のりづきあざみ(佐藤里穂)

女は街ゆく人々に槐多の絵を見せ「槐多を知っているか?」とインタビューをしていた。そこへ現れた男…槌宮朔/つちみやさく(遊屋慎太郎)は、「私がカイタだ」と言った。

薊は朔の後をついていく。朔は特殊な音域を聴きとる能力があり、村山槐多が自分に語り掛ける声を聴いたという。それ以来、槐多の存在に侵食され、自らが槐多だと思い込むようになっていた。

朔は自作した”ノイズ”を廃車工場の謎の男…式部鋭/しきぶさとし(佐野史郎)が作った改造車で発信しながら街を走っていたが、やがてその”ノイズ”に呼応したパフォーマンス集団の若者4人が合流し行動を共にするようになる。

村山槐多に魅かれ、突き動かされた若者たちの進むその先に待ち受けるものとは…

映画の見どころ(独断と偏見)

佐野さんが出演されると知って、どんな映画なのかを探ってみたところ、なにやら怪しい雰囲気。一筋縄ではいかなそうなお話に興味津々。

実は、映画館のような人が集まるようなところに出向くのがより苦手になってしまった。ここ数年個人的にソーシャルディスタンスという施策が心地よかったせいかもしれない。よほど鑑賞意欲が高まった時にしか映画館にはいかない。推しが出ていたとしても、「これは私には向かなそう…」という場合には劇場での鑑賞を見送ることもある。

だが、この映画は違った。予告編動画をみて「劇場で観るべき」だと思った。後日DVDソフトが出たとしても小さいTVのサイズではだめだ、と直感的に感じたのだ。初日舞台あいさつに佐野さんが来る!と分かった時点でもうこれはいくしかないと、チケット予約が始まるや否や最前列をGETした。


ここまで気合を入れて新作映画のチケットをとったのは初めてといっていいかもしれない。それぐらい興味がわいていた。

『予備知識なく純粋な気持ちで飛び込んでみたほうがいいかな』とも思ったが、話の軸となる『村山槐多』を知らなければこの映画の魅力は半減するかも…と感じたので槐多に関するお勉強だけはしてみた。

とにかくパワーがある。絵や物語の好き嫌いはあると思うし、万人が好きだ!というものではないと思う。が、熱量を感じる。

そんな槐多に触発されて作られた物語、ワクワクする。そしてちょっと怖い。
かなり期待して劇場へ。

ストーリーはあるにはある…だが、かなり異世界。登場人物の誰かに感情移入し、映画の世界に早々に没入したかったのだが、それができそうでなかなか…最初の30分くらい入り口が見つからなかった。

例えるならば…ダリの絵画を観て、これは…どういう意味なんだ?何を表現しているんだ?でも美しい…うーん…この思いはどこから来るんだ?と絵の前で自問自答して唸る感じ。

唸りながら、この映画の中のいろんなメタファーを探し、自分なりの答えを当てはめた結果、この映画は過激な姿をしているが、実際は純粋で素直な映画なのでは…と思い、強烈な作家の作品・功績に憧れ、何者かになりたい・この世に存在したい…あまつさえその憧れそのものになりたいともがき苦しむ人の物語のように感じた。

「村山槐多の映画を撮りたいと思っているがなかなかうまくいかない」といって脚本を手直しし続けている朔、「槐多」という強烈な個性に魅入られ・飲み込まれ、やがて「デスマスク」をつけ、自分の顔を隠し踊り狂い喝采を浴びたのはいいが、仮面が外れなくなり、やっとの思いで外した仮面の下の自分の顔は爛れてしまったパフォーマーたち…


かわいい女優にあこがれて近づこうと整形手術したり、誰かの作風をトレスして創作したり、SNSなどで自分の信じる論を振りかざし匿名で書き散らし傷つき傷つけること…といった、自分らしさや自分の主義主張よりも、憧れや理想のほうがいつの間にかでかくなってしまい、自分を見失ってしまうような‥‥登場人物たちはそんな若者のイメージと重なる。

理想や憧れに取り憑かれすぎると自分の個性がなくなり、やがて自分という存在が破綻する…素顔になってみたとき、アイデンティティとはどこにあるのか、そんなことを悩み考えたことのある者にとって(特にアーティストにとって)結構刺さる内容じゃないかなと思う。

お目当ての佐野史郎さんは、廃車工事の男…
ご本人曰く過去と今を橋渡しする役。
ファンタジーに説得力を持たせる重要な役割を担っておられました。

あんまりネタバレしないように説明するのが難しいんですが
昔好きだった人への執着を持ち、若い子を押し倒しちゃう役だったので
「こういう設定大好き!」とわたしは静かに興奮が爆発していました。

そしてそのシーンを見ながら
2023年1月の「林海造監督復活祭」のトークイベントで
『ひさびさに女性を押し倒した』と言っていたのはこの映画だったのかぁ…と納得

舞台挨拶はみんな優しい柔らかい雰囲気で、本当にさっきの映画にみんな出ていたの?というくらいさわやかな方ばかり。そしてこの作品をとった佐藤寿保監督ももっとこわ~い感じなのかな?と思っていましたが、とってもテンションが高くて面白くて一気に大好きになっちゃいました。きっと映画を撮るのが大好きなんだろうなと。

最近のコンセプトありきの映画…とくに「この映画は泣ける!」「この映画は感動する!」みたいな映画ばかり観てる方は、一発この映画をガツンと観ていただいて不思議体験をしてほしいな。各地での上映、ご盛況お祈りしております。


興奮しすぎて、のぼせて、やっとの思いで映画館を出たら
ちょうど佐野さんがファンの方々からサインを求められているところに遭遇。
(こういう偶然ってあるのよね…)
映画に刺激をうけたあとということもあって、佐野さんに少しだけアタックしてしまった(;^_^A…とはいっても握手と1月箱根に行きますね~というお話するくらいでしたが…次のお仕事もあってお急ぎのところ優しいご対応でした。すみません。ありがたや。

わたしにとっての「佐野史郎」という存在は、この映画で言う「村山槐多」のようなもので、時にギラギラとした刺激をくれる存在だし、トキメキや狂おしい感情を与えてくれる愛する存在であり、お芝居や音楽で気づきを与えてくれる…そんな憧れ・理想の存在で、素敵なお方です。

アーティストのはしくれとして、憧れや理想は越えていかなければいけない壁であることはわかっています。その壁を越えた向こうにきっと自分だと胸をはって言える”求めるもの”があると思います。憧れの人から放射される強いパワーを自分のエネルギーにして高い壁を飛び越えていくには相当な覚悟と努力が必要で、まだまだわたしは全然足りていません。でも自分なりに決着をつけたいし、理想の壁を越えたいな!とこの映画をみて改めて思うのでした。頑張る。いつもありがとう佐野さん。

佐野史郎さんの役どころデータ

役名:式部鋭
職業:自動車工場で働いているが…もともとは…?
女性関係:昔好きだった女性への慕情を捨てきれずにいる様子


おまけ:舞台挨拶のお写真(撮影・拡散OKだった)


舞台挨拶の中身はこちらをご参照ください>>ネットで公開されている記事
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