S.R.I(ShiroSano Research Institute)

佐野史郎さんを愛し、佐野さん出演作を研究する研究所

かまいたちの夜(2002)

かまいたちの夜

放送データ

放送:2002年7月3日21時
制作:TBSエンタテインメント
協力:株式会社チュンソフト
プロデューサー:中川善晴
脚本:伴一彦
演出:吉田秋生
音楽:御園雅也
出演:藤原竜也 内山理名 小橋賢児 浅香唯 濱田万葉 田中要次 温水洋一 北村総一郎 松金よね子 佐野史郎

作品のあらすじ

高彦(藤原竜也)は、フリーターとしてさえない生活を送っていた。バイト先では上司に目をつけられ、好きな女には声をかけられず…人気ゲームソフト「かまいたちの夜」のファンサイトにアクセスし、ハンドルネーム「透もどき」として顔の見えない交流を楽しむ日々だった。ある日、そのサイトで知り合ったメンバーたちとオフ会をすることになる。ゲームのヒロインの名前をハンドルネームにしている真理(内山理名)たちと集まって、ゲームの舞台のモデルとなったペンションを訪れる。だが手違いでペンションは予約できておらず、偶然にもゲームの舞台と同名のペンション「シュプール」に宿泊することに。ペンションのオーナー夫妻とオフ会のメンバー計12人の男女が集まるが、嵐に見舞われ、外界との通信が途絶えてしまい、「シュプール」に閉じこめられた一行。その夜、まるでゲームのように殺人事件が発生した…

ドラマの見どころ(独断と偏見)

まず、かまいたちの夜をご存じないかたのために説明を。

かまいたちの夜」は1994年に発売されたスーパーファミコンのゲームソフトならびにそのシリーズの名称(発売元はチュンソフト)。ゲームの中で小説を読み進め、いくつかの分岐点において提示される選択肢から答えを選び進めていくという新たなジャンル”サウンドノベル”の金字塔。小説家・我孫子武丸氏が手がけた良質なシナリオに、シルエットで表現された登場人物の演出が話題となったゲームである。選択肢を誤ると犯人を捕まえることができず、さらには登場人物が次々死んでいく…謎解きの面白さもあいまってヒット作となった。


そのヒット作の続編として2002年7月18日に、プレイステーション2用ゲームソフト『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』が発売されたのだが、このドラマはそのタイアップとして企画・放送されたようで、ドラマのDVDがゲームに付属するという触れ込みであった。

当時の記者会見の記事が残っていたのでリンクしてみることにしよう。

ascii.jp

…しかしここまで書いておいて何なんですが、実は感想を書くにあたりあまり気がのらないドラマです…うーむ。


わたくし工藤…1994年「かまいたちの夜」にドハマりしており、繰り返し繰り返しゲームをやりこんで、その挙句オマージュ推理小説を書いたくらい愛着のある作品なのだ。

正直言って、原作を壊してほしくなかったのである。
(続編が出るのもあまり歓迎をしなかった派)

なので当時ドラマ化の話は知っていたのだが、極力見ない方向に振り切っていた。
大好きな佐野さんが出るとわかっていても…である。これはかなり決意が固かった。


だが、時は流れ…「結局あのドラマって成功だったの?失敗だったの?」という答え合わせがしたくなる哀しき性。インターネットの世界を旅し、様々な感想を観て回ったとこ「最後まで観たが結局どういうことなのかよくわからない」「あれは何だったの?」「何回か見てみてやっとわかったような気がした」「結局誰が犯人だったの?」というような、”ストーリー破綻”をにおわせるような、不穏な感想が並んでおり、とても気になっていた…

(ちなみに、ドラマのことを検索して、出演者を確認し「あ、これ佐野さん出ていたんだっけ…」と思い出すほど記憶から消し去っていたようだ…)

冒頭にリンクした記者会見の内容において

脚本の伴氏「ゲームをプレイしたところ非常に怖くて楽しめた。このゲームの世界を壊さないように、オリジナルのホラーの部分を加えた。ゲームのダイジェスト版にはしたくなかったので、ファンのオフ会から話を膨らませた」

演出の吉田氏「ホラー色を強めたいという意向から、廃校となった古い小学校を改築したペンションを舞台に設定した。この小学校がドラマの中で大きな意味を持っている。出演者も皆個性的でヘンなヤツばかり出てくるので、丁々発止の掛け合いを楽しんでほしい。このドラマは、ミステリーホラーであり、また繊細で傷ついた若者たちの内面を描いた青春ドラマでもある」

…つまり、原作の「かまいたちの夜」はとっかかりとして使っているだけで、中身はオリジナルに近いっていうことか?!おうおう、私にとって大事な作品をそういう扱いにしたわけだな?

…ならばあえて観てみようじゃないか(上から目線)


ということで、覚悟を決めて観てみることにした。
配信でもよかったのだが、メイキングが気になって仕方なかったので、必死にDVDつきゲームソフトを探して購入。20年の時を経て鑑賞したわけなのである。

※これにDVDが付属している。


そして鑑賞した結果は…
「結局これは誰が犯人だったの?」
…なんと、ネットで目にした感想と同じことを口走ってしまった(笑)


殺人事件が起きてからのざっくりとした流れですが…
登場人物たちがそれぞれ問題を抱えるメンバーたちで、みな怪しい…そんな中、高彦は、正義感から真理を守りたいという思いを強くする。

そんな時、脳裏によみがえる過去の記憶…小学生の時の火事の記憶…いじめの記憶…今目の前に起きている事件と自分の過去がリンクしていく。そして、自分のなかに隠されていた真実に気がつき…という感じ。

あれ?犯人捜しどこ行った?

…演出の吉田さんの言葉を振り返ってみる。

「このドラマは、ミステリーホラーであり、また繊細で傷ついた若者たちの内面を描いた青春ドラマでもある」

そうなんです。この作品はミステリーホラーであり「謎解き」ではない。ここに私の、そして「かまいたちの夜」ファンたちの違和感があるのだろう。つまり誰が犯人かを当てるのは二の次で、主人公・高彦の内面を描くところに重点が置かれているのである。

ネタバレ回避して感想を書くのがとっても難しいので抽象的に書きます。

つらい場面にぶち当たったときに、自分の都合の良いように解釈したりして、心を慰めることはないだろうか。はたまた、記憶をちょっとだけすり替えたりして痛みを和らげたりすることもあるかもしれない。そして場合によっては「そこにいるはずのない人」を心の中に作り上げて、語り掛け、真実を書き換えてしまうこともあるかも…

高彦はそうやって繊細な心を守ってきた。昔から。
あるはずのないストーリーを作った。
そして「真理」をうみだした…いるはずのない「自分の理想の人」を…
自分自身で隠ぺいしてきた真実を知ったとき、高彦の世界は破綻する…

そういった人間模様を楽しむことに集中すればいろんな見方ができるドラマとして面白いかもしれません。いろいろ回収しきれていない伏線があるような気もするんですけども、もういっそ「かまいたちの夜」を知らない人の方が余計な先入観なしに楽しめるドラマだと思います。

おっと、肝心な佐野さんの見どころを忘れるところだった。

・佐野さんは、怪しい雰囲気バリバリなんですけど、比較的フツーの人です。
・大きな包丁をふるって料理したり、斧をもって脅かしてきたりしますけども神経質なだけでフツーの人です(2回目)
・奥様(松金よね子さん)から「ボクチャン」と呼ばれているという不思議な設定。どうやって結婚したんだろう?なれそめが知りたい!(笑)
・車を運転するシーンあり
(佐野さん免許持っていないのですが、車を運転するシーンが結構あるんですよね)

工藤の胸を打つようなときめくシーンはないのですが、怪しいたたずまいは素晴らしいですね~。

佐野さんと藤原竜也さんは1998年のドラマ「凍りつく夏」で親子役で、佐野さんが家庭内暴力をふるうおっかねーオトーサンでした。藤原さんはさらにその上をいくコワイ役なんですが、それを思い出させる組み合わせでもありましたね。


このドラマは配信で比較的容易にみられますので是非ご鑑賞ください!
そして鑑賞後あーでもないこーでもないと考えこもうじゃありませんか!
正直言ってゲーム付属DVDのメイキングのほうがおもしろかった…


佐野史郎さんの役どころデータ

役名:大林逸郎
職業:ペンションのオーナー。
女性関係:妻(松金よね子)。妻からボクチャンと呼ばれている。

スーパーファミコンソフト「かまいたちの夜」で言うところの、ペンションオーナー小林さんにあたる人物。ゲームの中のオーナーはとても温厚な方だったのですが、このドラマのオーナーは感情の起伏が激しく、神経質な性格の様子。